以前、相続税の申告のための日本庭園の評価のご依頼をいただいたことがあります。
評価の専門は機械設備(Machinery & Technical Specialties)ですが、大きな括りでは「動産の評価」でもあり、実務上でも機械設備とはいえないものの評価をすることがあります。
ライセンスを戴いている米国鑑定士協会では評価をいくつかの専門分野に分けており、各々にライセンスを発行しています。Real Propertyは日本の不動産鑑定同様の「不動産」や、Gems & Jewelryは宝石、Personal Propertyは直訳すると個人の資産ですが、テレビ番組でもお馴染みのいわゆる「お宝鑑定」が、この分野。さらに無形資産の評価としてBusiness Valuationがあり、事業評価や特許などの知的財産の評価を含みます。
庭園はどちらかと言えば不動産や個人資産の分野になると思うのですが、なんとか評価をと頼まれ、受任することとしました。
その案件では造園業者の方のご協力を戴くことができ、対象となる資産のリスティングを行い、CADで簡単な見取り図を作成して造園の専門家のご指導も戴きながら評価を進めました。庭の構成物も多種多様で、樹木は勿論、石灯籠や庭石、池もあり池に水を供給するポンプなど機械設備も存在します。
税務署の税務相談コーナーで評価の考え方を確認しつつ評価作業を進めました。基本的には「こんな庭はいらないから価値はゼロ」という論法は通用せず、相続発生時の状態で継続使用を前提とする評価になります。また、構成物によっても評価の方法は工夫する必要があります。例えば樹木は成長するにつれて市場価値が上がります。ですから、新規に調達した時点の価値が一番高く、次第に劣化・退化していくという前提に立つコストアプローチは採用できません。
対象となった庭園はしばらく手入れがなされておらず、その点も価値減の要因になります。
その他、庭園の専門家のご指摘で価値減の要因もいろいろと見つけられたことから、結果的には評価額の圧縮に成功しました。
残念ながら評価の専門家とはいえども、万物を知り尽くしているわけではありません。世の中見渡してもどんな機械設備でも知り尽くしている人はいません。今回も、皆様のご協力で集めた情報を整理して評価の手法に当てはめ結論にたどり着きました。
庭園の評価以外でも、不動産以外の有形資産で評価のご要望があればチャレンジができるかも知れません。どうぞ、ご相談下さい。