DX(デジタルトランスフォーメーション)。よく聞く言葉ですが具体的に何を言うのかは今ひとつ良く分かりません。トランスフォーメーション(transformation)とは何でしょうか。日本語で言えば「変形」「変化」「変質」「変換」をいいます。
しかし、単に今やっていることをデジタルにすると言う話ではありません。デジタルで何かすることをDXというのであれば、既に大半の企業がDXに取り組んでいることになります。残念ながら、そうではないのです。
トランスフォーメーションは使っている機器、道具を単にデジタルにすることを言うのではなく、仕事のやり方を”トランスフォーメーション”し、最終的には事業の形や企業その物の在り方を変えることこそDXといえます。
乱立する○○Pay
例えば、店舗のレジ。少し前までコンビニのレジに行くと性別と年代別のボタンがあって、店員がお客を見てこのボタンを押していたことをご存じだったかと思います。若い年代のボタンを押してくれる店員さんがいると思わず「ありがとう」なんて言いたくなりました。
最近では電子決済が導入されていますが、一件レッドオーシャンに見える電子決済にいろんな会社が○○Payに参入して乱立しています。その理由は電子決済で市場を制することを狙っているのではなく、顧客のデータを取りたいからだと言われています。電子決済サービスにはまず会員登録が必要で、そこに個人情報を入れることになります。そして会員がそのサービスを使って決済をすれば、会員情報と紐付けることによって、いつどこでどんな人がどの商品を買ったかが分かるようになり、そうしたデータを沢山集めて統計を取ることにより、売れる物を売れるタイミングで提供することが可能になり、売上の増加に繋がるというわけです。
そうなると、取引の少ない中小企業は得られるデータも少なく圧倒的に不利ではないかとも思います。しかし、中小企業には中小企業なりのDXのやり方があるのです。
逆風がますます強くなる中小企業
国は今まで中小企業の保護政策を採り続けてきました。中小企業は労働者の雇用の受け皿として重要でした。特に地方では大企業が生まれにくく、都会にある大企業もなかなか進出することはありません。東京ではどこでも見かけるメガバンクの支店やATMですが、地方では都市部で見かければいい方で、それ以外では全く見かけることがありません。見るのは地銀か信用金庫、農協か郵便局くらい。すなわち、地方経済を担うのは地方の中小金融機関で、そうした金融機関と取引するのは地方の中小の会社ということを推して知ることが出来ます。
日本は少子化と高齢化の進展によって、労働者人口は今後減る一方なのは間違いありません。したがって必ずしも雇用の受け皿を増やす必要もなくなり、逆に企業が多すぎることによって少ないパイを奪い合って不毛な低価格競争に陥ったり、採用難で継続することが困難になる企業も出ています。特に菅内閣においては内閣のブレーンが中小企業の競争力強化を打ち出しており、中小企業は自らが生き残る方策を考えなければならない時期に来ています。
勝ち残るためのDX
デジタル関連のハードウエアやネットサービスを展開する企業は、DXブームを商機とみて自社製品の売り込みに懸命です。グループウエアを使えば業務が改善されて生産性が向上する、3Dカメラを使ってコンテンツを作れば顧客満足度が上がる等々。確かに効果はあるかもしれません。しかし、本当の意味での「デジタルトランスフォーメーション」は違います。
ITを駆使して中小企業支援の最前線に立ち、次々と輝かしい成果を上げているプロのコンサルタントのリアルなDXの記事があります。
いかがでしょうか。パッケージされた製品を購入するのもひとつですが、リアルな現場では使えるツール、使えるデータを駆使して現状を知り、対策を考え、実行する。その中で会社の在り方、ポジションを変えていくのが正にトランスフォーメーション(「変化」「変質」「変換」)なのです。
時代の変化に潰される前に手を打って資金を作り、時代の波に乗る会社に変革させることがDXであり、勝ち残るための方策でもあります。
残念ながら、ここまで出来る専門家はごく限られているため、ホンモノのDXにめぐり逢える可能性は低いかもしれませんが。決して中小企業にとっても無縁ではなく、むしろ取り組まなければならない課題であることをご理解いただければと思います。
※フロンティア資産評価研究会に寄稿した記事を再掲しています