先日、困った事態に直面した。
「隣地の所有者のために無償で敷地に水道管を設置させているが、隣地の敷地内で下水の工事をするために、水道管を敷設している土地の所有者の同意も必要になった。ところが、隣地所有者が依頼した水道工事業者が持ってきた工事同意書の原稿に書かれていた水道管の設置位置が間違っているのでどうしたらいいか」とお客様から相談を受けた。
確かに、以前交わした水道管設置の同意書と照らし合わせてみると、水道管が設置されているとされる位置が違っている。今回業者の作った書類の通りだと建物の下を水道管が通っていることになる。
仮に建物の下の位置に水道管があるとすれば、基礎が打てなくなったりするから建物を建て替えるなどとなった時には障害になる。恐らく、工事同意書の内容は誤りだと思われるが、下手に同意の署名をして不正確な書類が残っていると遠い将来、問題を引き起こす可能性がある。
不動産というものは永続性がある。土地は永久に存在するし、建物も4~50年以上は存在するものが多い。そうなると、時を経て次に何かしようとした時に、関係者が代替わりしてそのあたりの事情を知っている人がいなくなるといった事態になる可能性がある。
そうなった場合に頼りになるのは書類や図面などの資料である。
その時、不正確な書類が存在しているとそれが紛争の火種になりかねない。ましてや使わせるつもりもない土地の部分を隣地の所有者が使うことに同意したかのような文書を作り出してしまうと、さらに厄介なことになってしまう。紛争にならなくても、実態を把握して書類の正確性を証明するためには大変な時間とコストが伴う。売却したい時に売れず機会損失が発生することも考えられる。
水道工事業者としては工事に着手するために形式的に水道事業者に同意書を出せば良いと思って適当に書類を作ったのかも知れないが、そんないい加減なことをやられては非常に迷惑である。水道工事業者が役所に言われるがままに、必要性の良く理解せずに書類を要求するのは困りものだ。自分たちがトラブルに巻き込まれないための保身のつもりかも知れないが、過剰に書類を要求すれば質の悪い書類が作られるリスクが高まる。
結局、お客様の方で水道事業者に書類の訂正を依頼して事なきを得たが、良く確認せずに同意書に記名押印してしまったらと思うと冷や汗が出る思いである。
形式的に同意書が必要だといっても、世間的には重要な意義を持つものであり、中身を確認しないで安易に押印することは大変危険なことである。
同意書にサインを求められても中身をしっかり吟味するよう、この記事をお読みの方にはご留意戴き、大切な財産をトラブルから守って戴ければ幸いである。