不動産の売買の中で大きな問題になる要因のひとつに地中残置物がある。
文字通り、地下に残されているものであり、目視で容易に発見できないから厄介なものである。
地中埋設物の例として良く挙げられているのは、コンクリートガラ、建物の基礎(布基礎、ベタ基礎や杭など)、浄化槽といったものである。
このうち、建物の基礎というのはとりわけ厄介である。
建物は倒壊すると人命や財産に大きな損失を生むため、倒れないことがまず求められる性能である。
一方、建物を建てる土地は建物の荷重をしっかりと受け止められる地盤を有していることが望ましいが、全ての土地が堅固な地盤を持つわけではなく、多少軟弱地盤でもそこに建築する必要があれば建築しなければならない。
そこで、大きい建物を建てる場合や、軟弱な土地に建物を建てる場合は、地下の安定した岩盤の層まで杭を打つことになる。地震の際に液状化現象から建物を守るためには特に有効である。
しかしながら、建物を取り壊す場合、この頑丈な杭が厄介な存在に豹変する。
建物を取り壊す場合は基礎まで取り壊すのが当たり前であるが、それは当然ながら杭にまで及ぶ。
つまり杭を抜かなければならないのだ。
杭は安定した岩盤層まで打つものだから引き抜くだけでも大変で、実際の工事では途中で折れてしまって引き抜けないことがあったり、抜けたとしても軟弱地盤の場合はじゅるじゅるの穴ポコができてしまうから、そこから地盤自体を破壊してしまうことにもなりかねない。特に地盤軟弱な地域では最悪の場合、隣接地の地盤にも悪影響を与えることもあるという。また、杭を抜く技術を持った解体業者が少なく、引き抜きのコスト自体も高いという。こうしたことから解体に携わる方は杭を抜くことに難色を示すことが多い。
廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃掃法/廃棄物処理法ともいう)においては不要なものを地中に置いておくことは禁止されており、存置すれば不法投棄ということになる。つまり法律上杭を抜くことは当然であるが、それ以上に地盤の破壊などのデメリットが大きいという。また、地中に杭を残しておくことはゴミの投棄ということになるが、まだ使える杭をわざわざ掘り起こしてゴミにしてしまうこと自体がゴミを増やす行為であり、建築コストの提言という観点からも、まだ使える地中の杭はできるだけ活用していこうという機運が最近は高まってきているという。
実は、廃掃法も不要物を残すことは違法としているが、使えるもの(有用物)であれば理屈上は法の適用からは外れる。ただ、法の適用についての具体的なメルクマールはなく、廃棄物関連の業界の出版物やサイトなどでは事前に行政に相談するようにと書かれているが、行政がこうした曖昧な問題にわざわざ踏み込んでくれるようなことは期待できず、実際に問い合わせても「わかりません」「お答えはできません」で終わってしまうことが多い。
この辺が、現場で取引に関わるものにとってはプレッシャーになる。
たとえば、建物はむやみに取り壊さず、次の建物の建築が固まってから取り壊すといった工夫をすることによって杭の有効活用の可能性は高まると思われる。
その他、建築図書の保存なども重要である。
見えないもの、ゴミかゴミでないか。非常に難題であるが、環境と経済性の両立という観点でバランスの取れた対応が必要ということであろうか。