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【不動産ヘルスチェック】カミソリ地は要注意

カミソリ地とは、まるでカミソリで剃ったような細い土地をいいます。

近年、土地の取引に当たっては確定測量をいって、隣接地の所有者と境界の点が正しいことを確認する作業を行いますが、この時隣地の所有者に書面に押印してもらいます。しかし、中にはどうしても押印を嫌がったり、難癖をつけて確認に応じない隣接地の所有者が出現することがあります。
こうした場合、売主、買主が合意しても境界確認ができないがために取引がストップしてしまうことになるため、数センチの幅で分筆して隣接地の所有者が介在しないようにする”奥の手”を使うこともあるようです(分筆した部分が残ってしまいますが、その後どうするのでしょうか)。

このカミソリ地ですが、使い方によっては強い交渉のカードにすることができます。
都市計画法上の「都市計画区域」では、建築基準法により、住宅など建築物の敷地は「幅員4m以上の道路に2m以上接しなければならない」とされています。逆に言えば、道路と敷地の間にカミソリ地が挟まっていれば道路に接していないことになりますから、ほとんど価値がないカミソリ地であっても、「接道させたいならこの土地を高く買え」と交渉ができる訳です。
道徳的にはあまり美しい話ではありませんが、直ちに違法であるとはいえません。とはいえ、早く解決しようとして”言い値”で買ってしまってその相手が反社会的勢力だったりすると厄介なことになります。

ですから、道路と敷地の境界付近に細いカミソリ地が挟まっているようでしたらどこまでが道路であるのか等、しっかり調べる必要があります。

カミソリ地で接道が取れなかった例
カミソリ地で接道が取れなかった例

実際にカミソリ地に出会うことはあります。その”カミソリ地”は左右の敷地の道路境界線をまっすぐ引くとそこは道路のはずなのですが、調べて見るとその土地の接道部分だけ10センチほどの他人の所有地だったのです。役所でも確認したところ「この部分は道路の範囲ではない」という話でした。
ちなみに、その土地は昭和一桁時代の登記でした。ここまで古い登記の場合、相続が発生していることが確実ですので、相続人と交渉しなければならないのですが、宅建士では戸籍などを調べることができないため手に負える範囲ではありませんでした。結局その案件の処理は弁護士にお願いしました。

カミソリ地は意外によく見かけます。もちろん全てが問題のあるカミソリ地である訳ではありません。
セットバックで交代した部分や、道路の拡幅で国や自治体が買収した部分もあります。

分筆を重ねてフラグメント化した例(イメージ)

しかし、ひどいものになると公図混乱地域で帳尻を合わせるために分筆を繰り返し、1㎡ に満たない小さな土地が複数発生し、現況特定が難しくなっているものがあります。もちろんきちんと調査をすれば分かるのですが、あまりに紛らわしいのはミスの基になり後々トラブルに発展する恐れがありますから、少々費用がかかっても極力合筆をして現況に合わせた方がいいと思います。
合筆はメリットがないという声も多いですが、フラグメント化しているような画地では積極的に合筆をすべきでしょう。

そうした観点からは、なるべくカミソリ地は作らない方がいいと思います。どうしてもカミソリ分筆が必要であれば、後々のケアも考えておかないと、後で処理する人が非常に大変な思いをします。その処理が数十年先になると当事者が皆変わってしまって事情を掴むことすら大変になります(もっとも当事者が変わることでスムースに問題解決することもあり得ます)。
不動産、特に土地は永続的なものであるが故に、数十年のスパンで考えなければならない問題もあるのです。先送りではないシナリオが必要です。


 

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