メニュー 閉じる

変わる貸し手の姿勢 – 借手の再スタートを考慮してもらえることも

私が社会人になった頃はバブル経済がはじけて、不況感が漂っていた頃だった。
数年後にはアジア通貨危機や日本でも北海道拓殖銀行や山一証券が破綻する金融危機が起こり、金融機関による貸し渋り、貸しはがしなどが社会問題になっていた。
不動産の世界でも不況のあおりで地価は下落が顕著であったが、郊外型大型スーパーマーケットと携帯電話販売店、そして消費者金融の無人契約機出店用地の引き合いだけは多かった。

その頃、仕事で同行した金融関係の方から「無人契約機は地獄の入口」というような話をよく聞いた。ご存じの方も多いとは思うが、ちょっとのつもりで1回借りて、返済しようとすると「返さなくてもいいからもう少し貸してあげますよ」という風に追い貸しを勧められ、それにはまってしまうと雪だるま式に借金が膨らみ、最後は身ぐるみ剥がれて人生を棒に振ってしまうというシナリオがあるというのだ。
実際に当時は商工ローンといわれる業者の厳しい取り立てが社会問題になっていた。借金を返せなければ臓器を売ってでも返せという恐ろしい取り立てである。
そこまで”エグい”取り立てをしていた業者は少数派だっただろうが、大筋はどこも似たようなビジネスモデルであったようだ。実際に、借金が返せなくて自殺というケースは非常に多かったらしい。

近年は少し様子が変わってきている。
自殺して保険金を返済の当てにするようなやり方は社会的には大きな損失を招くことになり、特に企業の社会的責任が重視される世の中になって、人命を軽視して収益を確保するような経営姿勢は受け容れられなくなったことが挙げられるだろう。また、不本意な形で退陣することになった安倍内閣が再び政権復帰し、再スタートを促す政策を掲げたこと、金融庁が「経営者保証に関するガイドライン」を発表したことにより、連帯保証が難しくなったこと。
さらには、競売により「強制清算価値」で債務整理するより、それ以前の段階で「通常清算価値」での解決を図った方が実務的にも有利という認識が金融機関にも浸透しつつあり、強制的、強権的な債務整理より、宥恕を含んだ対話による債務整理の方向性が強まっている。

厳しい条件がつくとはいえ、住宅ローン破綻の場合にも再スタートに必要な費用の留保が認められたり、残債の返済条件も柔軟に対応してもらえることもあるようだ。
但し、金融機関も人間の組織であるから、弁済できなくなった債務者が「当然」というような姿勢でいては解決は覚束ない。忠実に弁済する姿勢は忘れてはならないのが鉄則である。

関連情報