メニュー 閉じる

賃料ダウンは必要か

最近、特に事業用不動産などで問題になっているのが賃料をダウンさせるべきかあるいはダウンさせることができるかという問題である。

ご存じの通り新型コロナウイルス感染拡大の影響で飲食店を中心に自治体から営業自粛を要請され、収入が途絶えてしまったために賃料が払えないという事態が起こっている。
賃料は当然売上があって払えるものであるから、売上がないと払えないことになり、そのため賃料をダウンさせるかどうかという問題になる。

聞いている限りでは、賃料は維持で営業自粛期間中の賃料を猶予するケースが多いようである。もちろん賃料ダウンに応じるケースもあるが、現段階で賃料が大幅に下がっていると言うわけではないようだ。
賃貸借契約は一定期間継続して借主が物を借り受け、その対価を貸主に対して支払う契約であるから、一時的な営業不振を理由に賃料を将来にわたって改定させることは合理的でないからだ。

便乗値下げ要求に注意
中には売上が落ちていないのに、新型コロナウイルスによる混乱を理由に賃料値下げを求めてくる大手のチェーンなどがあるという。売上が落ちていて将来的に回復する見込みがないのであればともかく、そうでなければ不当な要求である。
賃料値下げを求めるならば、売上が落ちているという事実と売上が戻らないという確実な見通しがなければ認めるべきでないだろう。大手チェーンが個人の地主に対してこのような要求を行っているのであればコンプライアンス上の問題がある。

中長期的には賃料水準下落の可能性も
しかしながら、中長期的には賃料水準が下落に向かう可能性も高いのではないかと予測される。
今、悪影響が顕著に出ているのは小売りや飲食と言った仕入れから販売、売上として現金を回収する回転サイクルの比較的短い業種で、こうした業種は競争が激しく、キャッシュフローが潤沢でないため影響がかなり大きい。一方で、回転サイクルの長い業種で悪影響が出てくるのはこれからもう少し先と言うことになると考えられる。
現在、国や自治体が様々な補助金、給付金を用意していて、これらの資金が本格的に出てくるのが6月移行秋頃までと見られる。その間は景況感も少し改善するが、その後秋以降に再び調整局面に入ると考えられるから、このタイミングで不動産市況も悪化する可能性がある。そうなると、賃料も下落トレンドに入るであろう。

こうした予測を前提にすれば、当面は賃料の猶予でしのぎ、調整局面で値下げを覚悟する方が賢明であろう。もちろん、予測は予測で本当にそうなるとは限らないから、各個人で現状を分析して予測し、戦略を立てていただければと思う。

関連情報